ドイツ工房見習い修行 ~2011年秋・出張報告 Part1


主任講師の髙倉先生のヨーロッパに出張


今回は、先生に出張のレポートを書いていただきました。
一体どんな出会いや発見があったのでしょうか。


今回は昨年に引き続き、北イタリアのクレモナを訪問し、あわせてドイツのフランケン地方の主要都市であるWürzburgを訪ねてきました。

私自身、ミッテンヴァルト(南ドイツ・チロル地方の小都市)以北のドイツを訪れたのは25年ぶりということで、緊張しながらも沢山の発見を持って帰りたいという思いで出張してきましたので、ぜひ読んでいただければと思います。

訪問のきっかけは、今年の春頃にバイオリンクラフト&リペア科2期生の手戸愛理さんより見習い修行を始めたというお便りをいただいたことでした。


バイオリンクラフト&リペア科2期生
手戸愛理さん


マイスター(国家資格保持者)への道


報告に入る前に、この記事を読んでくださっている皆さんは、ドイツにおいて「マイスター」と呼ばれる技術者の国家資格があるのはご存知でしょうか?
弦楽器技術者の国家資格保持者はドイツでは「ガイゲンバウ・マイスター」(ガイゲンバウGeigenbauは弦楽器技術者の意味)と呼ばれます。

このマイスター制度ですが、マイスターの資格を得るには2通りの道があります。
その一つは、ミッテンヴァルト国立弦楽器製作学校に3年半通い、その後試験を通じて職人の資格を得て、実際の工房で修業を経験し、その後マイスターの国家試験を受けるというものです。

もう一つの方法は、まず3年程度の見習い修行を工房で行い、その後試験を通じて職人の資格を得て工房での修行をさらに重ね、その後マイスターの国家試験を受けるというものです。

これを簡単に図示すると次のようになると思います。



図.マイスター資格試験までの行程

島村楽器テクニカルアカデミーを出ているのにどうしてまた学校に行く必要があるのか?


このように2つの道があるわけですが、手戸さんも当初はミッテンヴァルトの国立弦楽器製作学校への入学を考えつつ、ドイツに渡りました。
しかし、現地で様々な工房をまわっているうちに何人かのマイスターの方から「すでに学校(島村楽器テクニカルアカデミー)を卒業しているのに、なぜまた学校に行くのか?」と言われたということです。
そのため、学校への入学準備から一転して、工房探しを始めることになりますが、いざ工房を探したとしても、相性が合う工房や親方とめぐり合うのはそう容易ではありません。仮に親方と意気投合したとしても、見習いを雇う余裕や必要が親方になければ見習いそのものが成立しません。
そのような中、多くの方にアドバイスを受けながら、地道に工房探しを続けるうちに、最終的には当校講師である河村先生のご友人を伝って、現在の親方となるマイスターと出会ったそうです 。

見習い(Lehring)として実施される職業訓練(Ausbildung)は、わずかながらとは言え給与や社会保険への加入や納税義務も生じるれっきとした仕事です。またそのために3年間の労働ビザも取得することとなります。労働ビザをとり、ドイツの地方都市で単身Auszubildende(職業訓練生)となった手戸さんは、以前にもましてプロフェッショナルとしての意識を高めつつあるように感じました。


Würzburgの街中にある工房にて
マイスター特製のカプチーノを手に談笑する手戸さん(中央)

少し長くなってしまいましたので、次回、手戸さんが勤めている工房や、ドイツでの生活を中心にレポートしたいと思います。お楽しみに!