DRUM TECH STORY第2話“マンハッタンのドラムショップ”

2話01
2話02

アメリカ生活を存分に楽しんでいた。ろくに寝てもいないのに気力も体力もみなぎっていた。
ドラムの学校は非常に厳しく、勉強は“実践訓練”だった。
確かにアメリカへの入国も職業訓練用ビザだった。
この国ではアーティストは職業だと明確に認められている事が何よりも素晴しく、僕のモチベーションは上がりっぱなしだった。
そんな中、いつも肌身離さず持っているドラマーのアイテム・・・そう、ドラムスティックの消耗は激しい。
新品で買ったスティックは1~2週間位するとロゴが剥げ落ち先端が欠け始める。
手の汗を吸ってスティックが湿気たようにも感じられる。

「そろそろ新しいスティックを買いに行こう」と思い、行きつけのドラムショップに足を運んだ。
ビルのワンフロアを広く使い大量のドラムセットやパーカッションが並んでいる部屋に入ると木のにおいがする。
ここの店員は友達のプロドラマー、そしてドラムビルダー(ドラムを作る人)だ。
「Hey, what’s up man !」元気か!と握手を交わし、棚に置いてあるお気に入りのスティックを選び始めた。
曲がっていないか?重さは?とチェックしていたその時、ふと目の片隅に見慣れない物が飛び込んできた。
「何だこれは・・シンバル・・人の顔?」、「ああ、これはシンバルを切って作ったオブジェ兼エフェクトシンバルだよ」と友達は言った。
飾っても良いし演奏も出来るユニークなシンバルだった。

「それよりちょっとこっちへ来て新しいドラムセットを見ないか?」と言われ、僕が店の奥へついて行くと、そこにはねずみ色のドラムセットが置いてあった。
見たところ普通のドラムセットに見えるが・・何だろう?と首をかしげている僕に、彼は「飛行機と同じ材料で作ったドラムだよ」といたずらっぽく言った。
えっ飛行機?・・翼・・胴体・・もしやジュラルミン製(金属)?信じられない!確かにジュラルミンは非常に軽くて飛びぬけて強度の高い金属だ。しかしどうやって材料を手に入れたのか?元々工学的知識を持っている僕の研究者魂が沸々とこみ上げて来て、早速近くに寄って調べ始めた。
頭の中で専門知識がグルグルと回っていた。
これはアルミニウム合金の“超々ジュラルミン7075”か、“超ジュラルミン2024”だ。
音に作用するものだろうか?変則的なエアホール(空気穴)とさらに別にスリット(楕円形の穴)が空いている。
恐ろしく堅いシェル、重さは・・持ってみると普通の木製のドラムセットと変わらない重さだった。

マンハッタンにあるドラムショップにはドラムビルダーがいる店が数軒ある。
そこに足を運ぶと、よく新しいアイテムを発見した。
他にも驚いたのは叩くと“クラゲ”のように全体がゆっくり“フワフワ”と波打つシンバルだった。
一体何で出来ているのかを聞いてもそのビルダーはニヤリと笑うだけで秘密は教えてはくれなかったが、
叩いたり触ったりさせてくれたのでよく調べていた。
僕はドラムと音楽、ドラムの演奏、ドラムのメカニズムに夢中になっていた。