DRUM TECH STORY最終話“修理、修理、また修理!”

7話01

7話02

ブルルルル・・電話が鳴った。こちらが返事をすると声の主は「すみません、シンバルが割れてしまいました。
出来るだけ早く直してもらいたいんですが」と切り出した。
シンバル修理の依頼だ。「了解しました!今から向かいます。
では後ほど」と電話を切った。いつもすぐに出動できるように玄関先には工具バッグが準備されている。
連絡を受けてから出来るだけ早く現場に到着し、その場で修理するのが自分のスタイルだ。
今回のようにお互いの予定が“今”合えば最速のスピードで修理完了できる。

以前ニューヨークで目撃した修理シンバルから数年が経ち、すでに自分でもおびただしい数のシンバルを修理してきた。
一枚、また一枚とハンドメイドで修理していると、割れたシンバルは沢山の事を語りかけてくれる。どんなセッティングをされたのか・・どんな扱われ方をしたのか・・シンバルメーカーによる割れの傾向・・・シンバルの個体差などなど。環境要因も踏まえると一つとして同じ修理になる事は無い。実に面白い!
修理する前には必ず割れたシンバルの症状を診断し、依頼者に以前と今後の演奏について聞き取り、最も良い修理方法を説明する。
割れ方や演奏スタイルによって修理方法は変化するのだ。
もちろん修理後の取り扱いについても説明する。
ドラマーが直った自分のシンバルを受け取り、シンバルを見る目に愛着が生まれているのを感じると何だかこちらも嬉しくなってくる。
「では、お大事に!」と握手をし、最後にサービスで作ったサプライズ“シンバル切れ端ペンダント”(アクセサリーとしても演奏エフェクトとしても使用出来る物)を渡し帰り道につく。

音楽スタジオで扱われるシンバルは個人の物よりもさらに過酷に叩かれ続けている。
その激しさに耐えきれず次々と割れてしまうシンバル達・・・修理、修理、また修理と現場は忙しい。
オイルの匂いとシンバルを削る音、金属片の中、マスクとゴーグル、グローブにエプロン姿で修理は進む。珍しそうに眺めているギャラリーがいると、修理は時に“ライブパフォーマンス”となる。
「このシンバルは・・・」とシンバルの話をしながら、相手の質問に答えるのはタフな修理作業の中でも楽しい場面だ。

そういえば、今までにアメリカで出会ったドラムテックやドラムビルダーもよく話をしてくれながら仕事をしていた事を思い出す。
彼らはパーフェクトに仕事をこなす能力に加え、必ず人を驚かし喜ばす力があった。
そして何より自分の仕事を一番楽しんでいた。
そんな彼らが好きだった自分も、今では一人のドラムテックとなり街中を駆け回っている。