DRUM TECH STORY番外編“再びアメリカへ”

番外01
古いドラムやシンバルの専門書、ドラマーの本を広げドラムの研究を進めていると沸々と「直接見たい、話したい」と思いはじめる。

そして2週間の仕事スケジュールを調整して再びニューヨークに降り立った。
久しぶりのサブウェイ(地下鉄)の匂いと飛び交う英語が眠っていた自分の感覚を揺り起こしてきた。

懐かしのドラムショップへ行き「Hey元気か!」と顔を出しドラムビルダーの友達と再会すると、早速日本から持って来た数枚の修理写真を見せた。
「Ohシンバル修理か」、「これは難しい修理だったろ?」、「この修理の仕方は・・・云々」、「どんな工具を使った?」などと意見交換していると、「いつまでニューヨークにいるんだ?工具バックを持って街へ出る仕事スタイルだろ、俺もよくやるよ。いる間に代わりに修理をたのもうかな?」などと久しぶりの会話で盛り上がっていた。

それから数日後、衝撃の出会いがやって来た。通りを歩いていると、ふと目に飛び込んできた物に息を呑んで立ち尽くした。
黒光りするドラムシェル(胴体)、ドラムヘッド(ドラムの皮)には鮮やかに描かれた風景画、ドラムの文献でしか見た事の無い古いドラムが目の前のショーウィンドウに飾られていた。
整備の行き届いたそのドラムは、本で見るよりはるかに美しかった。
感動してしばらく動けなかった・・・。
番外02
伝説的ドラムビルダーの工房にも出かけた。
会えるかどうか分からなかったが、とにかく行ってみた。
以前“クラゲのような不思議なシンバル”を見せてくれた人物だ。
工房の場所が移転していて迷ったがようやく場所を探し当て中へ入れてもらうと所狭しと、工具やドラムが並んでいた。しばらく話をしていると、彼は奥から何やらゴソゴソ取り出して来た。
「これは私が開発した新型のドラムだ。ここを見てくれ、ボルトを緩めずにワンタッチでドラムヘッド(ドラムの皮)を取り変えられるんだ」と実演してくれた。凄かった!確かにその通りだった。

友達のドラマーとドラムテックにも再会出来た。
バーで飲みながら最近話題のアーティストやドラムのチューニング、今やっている仕事などの話をしながら夜は更けていった。

見て、聞いて、話して、沢山感じた。2週間が過ぎ、再び日本に戻ると早速仕事に取り掛かった。
明らかに体中に力がみなぎっていた。自分で成長するためには直接現地に飛び込み経験するのが一番大切だ。

この仕事は音楽と人に対して大きな責任を負う。ドラムテックは工具を持つ前に、まず音楽を深く知りドラマーについて熟知しなければならない。
その上でアメリカ音楽の歴史と共に進化を遂げてきたドラムセットについて系統立って学ぶのだ。
あなたの目の前にあるドラムの小さな部品には驚くべきストーリーが隠されている。
決して雑誌やカタログには紹介される事の無いドラムエンジニア達の努力に触れると、あなたはこの仕事が単にお金を稼ぐだけの手段ではなく、その歴史の端に立つミッションの一つだと言う事に気付くだろう。
仕事をする時、私はこの感覚が最も大切だと強く信じている。