大学生・短大生・専門学校生からギター職人になるには

大学や短大、専門学校を卒業した後に進路の一つとして楽器業界をお考えの方も年々増えているように感じます。
島村楽器テクニカルアカデミーの様に専門技術を学ぶ学校というと、高校卒業後すぐに通うというイメージが一般的には強いかもしれませんが、年度によっては大学や短大、専門学校を卒業した後に、入学される方の方がクラスの大半を占めていることも少なくありません。

これは、「大学に入って初めてギターやベースに触れた」というような開始体験があることに加えて、「大学などで専門課程を学ぶ中で自分が本当にやりたいことについて考え、それが楽器業界であった」などの背景が合わさったというケースが多いからではないかと思われます。

さて、大学在学中に弦楽器技術者になりたいと思ったとき、いつから勉強を始めるべきでしょうか。
大学は卒業しておくべきか、中退してすぐにはじめるべきか、いろいろと判断に悩む方は多いでしょう。
ここでは開始時期別に分けて、一緒に考えてみたいと思います。

■中退の場合
大学は最低でも4年間、短大や専門学校でも2年の就学期間がありますが、在学中に楽器製作や修理に興味もった場合、中退してすぐにでもギター職人への道を歩み直すべきだと考える人も少なくありません。

まず、この選択をすることによるメリット、デメリットを考えてみました。

メリット

  1. 経済的な負担を減らせる
    大学生活において充当する予定のあった学費をあてられる。
    (早ければ早いほど経済的な負担は少なくなる可能性がある)

  2. 開始時期が早くできる
    修得に時間がかかる技術の訓練を、少しでも早く始めることができる。
    (年をとればとるほど、修得できる技術の範囲は限定される)

デメリット

  1. 学士の資格が得られない
    楽器の仕事ではそうでもないですが、仕事によっては、まだ、大学を出ているかがバロメーターの1つとして見られることはあります。

  2. 辞めたことについて必ず問われる
    大学卒業しなかった理由はしばらくの間、必ず聞かれるはずです。

この中でデメリットの2番目については、まだ体験をしておらず、その重さに気が付きにくいという方も少なくないと思います。
補足しますと、これは、当初決めた道をやりきらず途中で辞めるということについては、必ず相応の理由や覚悟が求められてくる、ということです。
大学入学にあたり、出資をしてくださっている保護者の方がいるならば、納得が行く理由を説明できるかどうか、また今後、自分自身がまた道を変更しないと言い切れるかどうかという覚悟が問われます。そして、当然ながら専門技術の修得が大学の単位取得や論文より決して優しいということはありません。

もしも、反対をされて、それであきらめざるを得ないと感じるのであれば、まずは、目の前のことに区切りをつけるという意味で、しっかりと大学を卒業された方がよいかもしれません。たとえ開始時期が数年遅くなったとしても、その期間も決して無駄ではなく、それはそれでメリットとして将来に向けて生かしていくことができるでしょう。

大学を卒業するまでに取り組めること

  • 技術者の方や進路として検討している学校を訪問し話を聞く
  • 演奏の練習に集中する
  • 多くのジャンルや音楽史に触れる
  • アルバイトで貯金を作る

上記のようなことを熟考した上で、それでも今が舵を切るべきタイミングだと感じるのであれば、インターネットの情報収集などだけに頼らずに、ぜひ実際に学校を訪ね、講師から直接話を聴いてみることをお勧めします。

■卒業してから学び始める
このケースはタイミングが2つ考えられます。

  1. 大学卒業と入れ替わりに、専門校に入学
  2. 大学卒業後に一度仕事を経験してから、その後専門校に入学

今回は1のケースを考えてみたいと思います。

大学卒業後に当アカデミーに入学した方については、これまでに入学された方を見てもその理由も様々です。

  1. 大学で学んでみたもののそこに本当にやりたいことはなかった
    大学を卒業した(場合によっては大学院まで進んだ)が本当にやりたいことがそこにはないと感じた。

  2. 就職活動時に目的が変わった
    就職活動において本当にやりたいとも思わない仕事に意欲的に向かっていくポーズをとらなければならないことに違和感を覚え、本来興味があった楽器や音楽関係で仕事を探したいと思った。

  3. とりあえず大学は卒業しておきたかった
    もともと楽器業界を目指していはいたが、念のため学士の資格をとっておきたかった。

様々なケースがありますが、今、大学に在籍中の方に、もし、1つだけ勧められることがあるとすれば、それは大学3年生~4年生で「就職活動」をしっかり行っていただくということです。もちろん、やる気はないのに就職活動をしてしまっては採用者たる企業の方々にも失礼になってしまいますので、そうした実質的な活動は就職の必要性がないのであれば、するべきではないでしょう。しかし、周囲の友人や同年代の学生と一緒に企業研究をし、将来を戦略的に考える時間を持つことは、たとえギター職人をその後目指すとしても、よい影響を与える経験になると思います。
実際に、就職活動を経てから当校に入学された方は、現実の厳しさをよく心得て技術習得に一層真摯に取り組む傾向が見られます。

いくつかのタイミングを今回は考えてみましたが、どのタイミングを選んだとしてもメリット・デメリットがあります。そのため、選んだタイミングを自分にとってのベストだと考え、そこからどのような道筋を描くかということを考えることが大事なのではないでしょうか。

どうしても高校卒業後から始める方と比較して遅くなってしまいますが、経験していることが多く、また専門課程の勉強、論文などへの取り組みを通して、楽器技術にまつわる事象をアカデミックに扱っていける素地を身につけることができるのは大学経験者ならではの強みとしていけるはずです。



本科で作業に取り組む学生の様子