第1回レポート
「修復作業の前に取り組むこと」

日々の仕事で役立つ具体的な講義

10月12日(月・祝)にAndreas Preuss 氏による修理・修復特別講座が開講されました。

(講師:Andreas Preuss氏)

今回は専門家向けのセミナーとして、都内の複数の工房や楽器店で活動される弦楽器技術者の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた技術者の方々は、個々に講師として講座をもっていただきたいような第一線で働かれている方々もおられ、開催者としても大変有り難く感じています。

講義の特徴

今回、参加ができなかった方にもぜひご案内させていただきたい内容のセミナーでしたので、拙文ながら講義の様子を簡単にお伝えしたいと思います。

(修理前のクリーニングについて説明中の講師)

「修復作業の前に取り組むこと」というタイトルではじまった第一回目は修理・修復前にチェックすべきことの確認にあわせ、実技として工房行われているクリーニングや、手作りの磨き剤や、修理のためのバイオリン本体の箱開けなども一部始終見せていただきました。
講義だけでなく実技が見られるというところ、また机上の講義ではなくふだんの仕事にすぐにでも取り込むことができたり、ふだんの仕事を見直すことができる内容が多いのが今回の企画のポイントです。

例えば、今回取り上げられた1つ「バイオリンの箱開け」は、バイオリンの修理・修復技術者であれば、ほとんどの方が行っている仕事ですが、改めて他の技術者の方がどのような方法と手順で実際に取り組んでいるかを見るのは大変勉強になります。小さなことであっても気づきによって作業のしやすさや安全性が大幅に改善される、ということは多いと思います。

また、別の側面で興味深いのは、Preuss氏の経験談が聞けることです。Preuss氏はかつて世界トップクラスの修理・修復家として知られたニューヨークのRené A. Morel 氏(1932年3月~2011年11月没)のもとでお仕事をされていたことがあるのですが、今回、その当時の貴重な経験談を交えて話を進めてくださり、2時間という時間はあっという間に過ぎてしまいました。

(チェロの指板傾きを確認する参加者)

今回は1回目ということもあり、まだ遠慮がちな空気もあったかもしれません。
しかし、今後は参加いただける皆様の現場でふだんから抱えている疑問やノウハウを互いに持ち寄る、静かに白熱したセミナーになっていくのではないかと思いました。

終わりに

最後に今回の講義中の言葉を紹介して締めたいと思います。

「先生の言葉を鵜呑みにしないこと」
この言葉はTom Wilder氏(弦楽器の技術書”The Conservation, Restoration, and Repair of Stringed Instruments and Their Bows”の編者)よりかつてPreuss氏にあてられた言葉の1つで、受講生の皆さんに紹介していました。
「書籍やセミナーがすべてのノウハウを網羅することはできませんが、基本的な部分を把握できれば応用の範囲も広がるので、ぜひ皆さん自身が1つ1つの仕事に相対するときに、慣習として行うのではなくよく考えてほしい」
というPreuss氏ご本人の言葉と合わせて印象的でした。

今後も2ヶ月ごとのセミナー予定とともに、実施後に1回ずつのセミナーの様子を簡単にお伝えしていきたいと思いますので、ご期待ください!