クレモナ国立図書館La Biblioteca Statale di Cremona訪問

クレモナ市における4日目の研修は、クレモナ国立図書館の訪問 (La Biblioteca Statale di Cremona)から始まりました。

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今回の図書館研修の目的は、 ‘Carteggio(手稿)’と呼ばれる資料に目を通すためでした。

この ‘Carteggio’ と呼ばれる資料はどのようなものなのでしょうか。研修報告の前に、少しこの資料についてふれてみたいと思います。

〜サラブエ伯爵(Conte Cozio di Salabue)の手稿 ‘Carteggio’ について

イタリアの弦楽器製作史において非常に重要な位置を占める手稿、‘Carteggio’ は、Ignazio Alessandro Cozio di Salabue 伯爵(1755-1840)(※以下、サラブエ伯爵)によって記されたものと言われています。
イタリア弦楽器史の貴重な記録であるとともに、この手記を通し、サラブエ伯爵自身が、現代における鑑定家、ディーラー、弦楽器エキスパートと呼ばれる職業の役割を最初に示したものであるとも言われます。

サラブエ伯爵の経歴を少しだけたどってみましょう。
北イタリアはCasal Monferato に生まれたサラブエ伯爵は、チェスの名手でありまたバイオリンの演奏家でもあった父親から影響を受け、若いころからバイオリンに対する情熱的な関心を寄せるようになりました。
1771年、彼が16歳のときに、時の弦楽器製作家グァダニーニ(Giovanni Battista Guadgnini)がパルマを離れサラブエ伯爵がいたトリノにやってきます。そして、グァダニーニと知り合ったサラブエ伯爵は18歳のときには、彼の工房から出る楽器のすべてを買い付けるという契約を結び、生涯にわたって、50台以上の彼の楽器を購入したと言われています

また特筆すべきは、1775年に亡き名人ストラディヴァリ(Antonio Stradivari)の息子の1人、Paolo Stradivari を通してストラディヴァリの遺品であった道具を譲り受け、それをグァダニーニに貸し与えては、楽器作りに役立たせたという事実です。この遺品は、幾人かの手を経て、現在ではクレモナ市の博物館にて見ることができます。

このようにイタリアの弦楽器製作史において2つとない重要な役割を果たした伯爵の足跡を、博物館の見学を通して見ることはもちろんですが、クレモナ国立図書館に収蔵されている彼の手稿 ‘Carteggio’ に直接ふれることで、より広い視野をもって勉強できる機会となりました。

‘Carteggio’については、Brandon Frazier氏により2007年に英・伊訳の書籍が刊行されており、その主要な内容はすでに読むことができるようになっています。しかし、実は文章化できる資料以外のものについては、未掲載であるということがわかっていましたので、今回はその未掲載資料の全容をおおよそ把握し、今後の勉強に役立てることが目的の1つでもありました。

(資料を閲覧し、メモをとる参加学生たち)
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結果的にこの訪問では非常にたくさんの発見があり、またサラブエ伯爵がただの凡庸なコレクターでなかったことを参加者全員が感じることができたと思います。

‘Carteggio’に関してはまだ解明されていないことも多く、歴史家、研究者のレベルのみならず、われわれ職人も含めた今後の継続的な研究が必要になってくると思いますが、今回の研修旅行の中では宝探し的な側面のあった弦楽器技術者ならではの楽しい時間でした♪

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日本から足を運んだ我々に閲覧と調査の機会を与えてくださった図書館スタッフの皆さんに心から感謝したいと思います。

※サラブエ伯爵の経歴について一部引用 http://tarisio.com/cozio-archive/cozio-carteggio/the-carteggio-of-count-cozio-di-salabue/