Museo del Violino(バイオリンの博物館)研修

研修旅行のしめくくりに訪れたのは3年前にはまだ工事中で訪問ができなかったMuseo del Violino(バイオリンの博物館)です。
3年前までは、「ストラディヴァリの遺品(道具など)」「クレモア市の名器コレクション」「ストラディヴァリ国際弦楽器製作コンクールの受賞作品」などはそれぞれ市内の別々の場所に展示公開されており、それらの閲覧を希望する人はクレモナの町中をまわらなければなりませんでした。

今回、Museo del Violino として、それらのクレモナ市のコレクションが一堂に会する形で収蔵されたということで、博物館を訪問しました。

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博物館では日本人スタッフとしてガイドを務めておられる安田恵美子さんのご案内の元、収蔵楽器および有名なストラディヴァリの遺品の数々を見学させていただきました。

博物館内は残念ながら撮影禁止となっているため、中の様子は写真ではお伝えできませんが、常設展とは別にロシアの所有するコレクションの一部が公開展示されており、間近に見ることができたことも大変勉強になりました。

また、今回は単なる見学ではなく、すでに見学を終えていた図書館と博物館をつなぐ細い糸を理解することも私たちの訪問の目的の1つでした。
そのため、Mueso del Violino のキュレーターであり、かつては(やはり前日に訪れてた)Carlson & Neumann の工房においてオーナーの1人として活躍していた経歴もあるFausto Cacciatori氏より、博物館の所蔵するコレクションの由来に関するレクチャーを受けさせていただきました。

Caccaitori氏の説明では、博物館の収蔵品は、寄贈されるまでにいくつかのルートをもっています。
1つ目は、1800年代のクレモナの製作家として知られるEnrico Ceruti の遠縁となったCerani(チェラーニ)氏の寄贈によるもので、この寄贈品群は1903年にリスト化されています。この品数は408点であったとのことです。
また1914年には収蔵品に関する最初の検査が行われた記録が残されています。

その後、1930年にSalabue 伯爵(※伯爵については、同ブログの「クレモナ国立図書館La Biblioteca Statale di Cremona訪問」の記事もご覧ください)から脈々とつながるストラディヴァリの遺品がG.Fiorini氏よりクレモナ市に寄贈されます。この時点で寄贈品は1303点を数えます。
そして、今では信じられないことですが、この遺品は、1956年12月6日には当時のクレモナ国際弦楽器製作学校に移され、しばらく学校教材として学校に保管されていた時期があったとのことでした。(当然、当時の学生たちはストラディヴァリの型枠などを使用して製作を行っていたということになるので、なんともうらやましいかぎりです。が同時に学生たちに扱われていたとなるといったい何が起きていたか想像するのも・・・)この時点で収蔵品は1117点を数えています。

遺品の大部分は1972年に修復家としてもよく知られたS.F.Sacconi氏によりカタログ化され、709点を公開展示しました。
また1987年に作られたカタログには710点が掲載されましたが、この間は収蔵品の調査に大きな進展は見られなかったようです。

こうした経緯を専門家が追いかけるのは、様々な形で収蔵品が移動する過程で、遺品がどのように整理され(あるいは排除され)てきたかを知ることで、現在私たちが目にする博物館の展示品が資料としてどの程度、信頼のおけるものかを測ることができるためです。
また、こうしたことをつぶさに調べていくことで、収集過程で価値がないと見なされたものの中にも、興味深いものが眠っていたことが発見された実例をいくつか教えていただきました。

恐らく弦楽器の世界に限定されたことではないですが、考古学的調査が完全に解明されるということは難しいものかもしれません。しかし、それでも研究者の方々の地道な調査があるおかげで、私たち弦楽器の製作・修理を行う現場に立つ者には仕事を検証していくうえでの様々なヒントを与えられています。

レクチャーでは、この他にも、当時使われていた紙や遺品に書き込まれた筆跡鑑定に関するお話もあったため、参加者にとっては今後の博物館収蔵品を見学するための参考になったと思います。

弦楽器職人の仕事を正直に行おうとすると、それは一生勉強し続けなければならない世界であることが誰でもわかってくると思います。そして、その世界を解き明かすには、まだまだ多くの熱心な専門家と弦楽器職人が必要になってくることでしょう。

博物館見学の後は、自由時間。
参加者も残り少ないクレモナの滞在を思い思いのスタイルで過ごしました。

(ストラディヴァリの家にて、研修旅行参加者のコントラバス試奏の一幕)
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