バイオリンクラフト&リペア科 設立をふりかえる

皆さん、こんにちは。
前回の投稿で、学校の仕組みについて書きたいと書いたのですが、その前に少しだけ今回は代官山音楽院バイオリンクラフト&リペア科の成り立ちをふりかえってみたいと思います。

バイオリンクラフト&リペア科は、代官山音楽院が設立された当初はまだ学科としてはありませんでした。
学校の設立は2003年の4月でしたが、バイオリンクラフト&リペア科が設置されたのはそれから3年後の2006年の4月でした。

設立にあたっては、現在の島村楽器株式会社の三田バイオリン専門店の店長である茂木さんにに声をかけていただき、茂木さんと私(髙倉)の2人3脚で2005年から設立準備に動き出しました。

茂木さんは、島村楽器の中では弦楽器のスペシャリストとしてドイツのマイスター制度の資格をもっている弦楽器技術者です。一方で私は弦楽器製作については、イタリアで学び仕事をしてきたこともあり、茂木さんと2人で、ドイツやイタリアのそれぞれのよいところを力を出し合って開設に臨もうということで一致しました。

これは言葉でいうのは簡単ですが、ドイツとイタリアは水と油のように隣国であってもまったく違う文化をもっているため、国内の音楽と楽器技術を盛り上げていこうという意識がなければ力を合わせるのは決して簡単ではありません。
今でも講師の間では、それぞれがもつバックグラウンドの違いから様々な意見が出されることが少なくありません。それでも、お互いの違いを認めつつ、それに敬意を払うことができれば、多くの場合、時間はかかっても差異はよりよい技術へのアイデアとなっていくものだと感じます。

当時は国内で弦楽器の技術を指導している学校は少なかったこともあり、せっかく始めるのならば海外の学校に比べても劣らない内容を目指そうということなりました。そこで、国内の専門店や個人工房で特に需要が多い楽器のメンテナンスや修理に学生の皆さんの技術修得の的を絞り徹底する一方で、楽器製作やニス塗装については海外から材料や道具を輸入するところから始め、小さくても探究心においては海外の学校にも劣らない内容をと考えながら少しずつ学科の基盤を固めていきました。

今でこそ、日本国内の現場で叩き上げで実力をつけられた優秀な先生や、イギリスを始め諸外国で研鑽を積まれた先生方に恵まれていますが、設立当初は文字通り試行錯誤の毎日でした。それでも初年度から優秀な学生に恵まれたことは本当に幸運だったと思います。

今でも時々、10年前にガランとした病院のような真っ白な部屋を見せられて、「ここでバイオリン製作の授業をやってください。」と当時の学院長に言われたときのことを思い出しますが、そのようなときから学科を支えてくださった先生方には感謝しかありません。
講師は多くの場合自分の工房を持っているので、必ずしもずっと学校での仕事を続けていただけるわけではありませんが、それでもそれぞれの講師の方が独自に築いてきたユニークなキャリアを通して学生に多くの刺激を与えてくださったと思います。

さて、今回は成り立ちについて書かせていただきましたが、次回は海外と国内の学校の仕組みとその違いについてふれてみたいと思います。

(左:高倉、右:茂木 2013年の茂木店長来校時に)
DSC05416