大事にしたいこと

皆さん、こんにちは。
最初に記事に何を書かせていただこうかと考えたのですが、バイオリンクラフト&リペア科が立ち上げからこの10年間大事にしてきたこと(大事にしたかったこと)を書かせていただきたと思いました。

皆さんは弦楽器の技術学校が大事にすることはどんなことだと思いますか?
製作技術でしょうか?専門的な知識でしょうか?弓の毛替えの技術でしょうか?それともお客様へ的確なアドバイスができる経験を培うことでしょうか?

ここに挙げたいずれの専門性も大事なことですが、私たちが大事にしたいと思ってきたことは、「自分以外の(技術者の)悪口を言わない」ということです。
意外に思われる方もおられるかもしれませんが、「うわさ話をしたり、悪口や批判を言うような暇があったら、自らの腕を磨いたほうがよい」ということをずっと言ってきました。

これは単に理想論として掲げたのではなく、ドイツで仕事をしてきた技術者とイタリアで仕事をしてきた技術者が力を合わせて学科を立ち上げようとしたため、それぞれのよさを活かすためには、当初必要な方針でもあったのです。

もちろん、技術者と言えども人間なので、その通りできずに凹むことも多々ありますが、基本的な方針がそこにあったことが大事なことであったと考えています。

普通の社会生活を送っていれば、「悪口を言わない」などということは、一見、当たり前のことと思われるかもしれませんが、元来、職人(技術者、製作家)はなかなか他の職人の技量を認められないものです。
腕を磨き、自信をつけ、さらに技術を極めようとすればするほど、他の人や他の流派のやり方が考え方や技術力や精度に対して、どうしてもモノを申したくなるものです。そのため、あえてそこに挑戦してきました。

この10年間を振り返って、多くの方々に支えられて何とか学科がやってこれた背景には、もちろん関わってくださった先生方や学校の内外から応援してくださった方々の存在、学生たち自身のがんばりもありますが、その中で卒業生となって実際の現場でがんばっている人たちが、行った先々の現場でもおそらくはそのような姿勢を大事にしてくれているからではないかと思います。

心ある技術者の方の中には、まだまだ未熟な講師の指導や、学生に対して、「代官山音楽院これでいいのか!」とあえて苦言を直接呈してくださる方々もおられます。いろいろな見方・立場・流派があるものの、そうした言葉は本当にありがたく思っています。また、そうした声に励まされて進んできた10年でもあったように思います。なかなか直接皆さんにお礼を言いにまわることもできていませんが…
これからの10年もその姿勢は持ちつつ、オープンな弦楽器技術業界を目指して日々切磋琢磨していきたいと思います。

さて、次回からはもう少し学校の仕組みなどについて具体的なことを書かせていただこうと思います。