2年間で学べること(考え方)

さて、前回からの流れを受けて、「2年間で学べること」を今回は書きたいと思います。

2年間で学べることのもっとも大事なこと。皆さんはどのようなことだと思いますか?
私は学校の2年間で学ぶべきことのもっとも大事なことは、弦楽器に関する専門的な技術や知識はもちろんですが、それ以上に「学び方を学ぶ」ということだと考えています。
なぜなら、技術や専門知識の向上には終わりがないため、学校を出た後も、自ら学び続ける必要がどんな人にも生じるからです。指導してくれる人がいないような環境下にあっても、よりよい仕事をするために自ら学びを深めていくためには、学校でどれだけ先生のことを聞いてよくできたかということよりも、自らのペースで、道を切り開いていく力こそが問われます。

代官山音楽院にかぎらず、弦楽器技術を学ぶ専門校には、演奏経験のある方が入学されることはありますが、木工やその他の技術経験がある方が入ってくることはまずほとんどありません。皆さんが経験ゼロの状態で入学されます。そこからスタートして2年間で手の技を身につけるというのは容易なことではありませんし、学校を出て、現場でしか学べないことを手にしていくためには、どのように専門性を高めていくかということを知っていなければならいないと考えます。

一例をあげると、むかしから「研ぎは三年」と言われますが、私達の仕事に欠かせない刃物(カンナやノミなど)の研ぎはそれ一つをとっても、すぐには身にきません。もしも研ぎを身につけるのに3年かかるのであれば、専門校の2年間ではとても足らないということになってしまいます。ましてや、修得すべき技術は研ぎだけではなく多岐にわたります。

これまでの卒業生も先輩たちも、基礎的な学びをここで終えた後は、現場に出ていき、現場の仕事をこなす中でさらに広く深い技術を身につけてきました。最近は、そうして学びの幅を広げた卒業生が学校に立ち帰り、後輩にアドバイスを与えてくれることも増えてきたのは本当にありがたいことです。

つまり、「学ぶ」ということは学校を出た後も続いていくのです。
別の言い方をすると、いかに学ぶかということをしっかり学ぶことで、その後の道を自ら方向付けていく力がつきます。
このことはさらに一歩踏み込んで言うならば、いかにして弦楽器技術者としてのキャリア・パス(キャリアの設計図)を描いていけるかということにもつながっていきます。

今回は、弦楽器と音楽の世界からは少し離れるように感じられるかもしれませんが、ピーター・ドラッカーという経営学者の有名な言葉を紹介したいと思います。
「21世紀に重要視される唯一のスキルは、新しいものを学ぶスキルである。それ以外はすべて時間と共にすたれてゆく。」

ふるくから続く、弦楽器の技術も最近は、様々な研究が世界中の熱心な技術者によって行われ、年々新しい成果や技術を学ぶ機会が増えてきています。インターネットの発達で、加速度的に情報の流通量が増えつつあることは、弦楽器技術の世界においても無関係ではありません。

先人のつちかってきた技術をしっかりと受け継いで、基礎を固めつつ、ぜひ皆さんにしかできない次の弦楽器技術と音楽の幸せな関係をつくっていってほしいと願ってやみません。

次回、もう少し詳しく、具体的に島村楽器テクニカルアカデミーで「2年間で学べること」を書きたいと思います。

(写真は、Modomusica研修旅行でイタリアのミラノ市立弦楽器製作学校を訪れたときの写真です。それぞれの学校で学ぶ目的は多少違っても、インターネットの発達もあり、世界中の技術者がともに学び合う環境ができつつあります。)
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