2年間で学べること

前回、「2年間で学べること」の考え方にあたる面をお伝えしましたが、具体的な内容としては、入学案内とホームページにカリキュラムが掲載されていますので、そこを見ていただければおおよその内容はなんとなく伝わるのではないかと思います。

しかしそれだけでは具体的なイメージをもっていただくのが難しいと思いますので、卒業(2年目の3月)の段階で受講生の方1人1人がどのような技量を身につけているのかというイメージをお伝えしたいと思います。
(あくまでも平均的なイメージなので、個人差があることはご了承ください)

まず本科生ですが、2年生の終わり、卒業間際の3月には1台の楽器を作り終え、塗装も終えて、最初の記念すべき1台を手にしています。塗装の仕上がりによっては1台目から購入を希望される人が現れることも珍しくありません。
中には2台目をすでに作り終えて3台目、4台目を作るツワモノもいます。

2台目は1台目と比べて、難しさが際立つこともあります。それは1台目が講師と一緒に作った楽器であるのに対し、2台目は1人で作っていくため、すでに理解していたと思っていたところが実はわかっていないかったということが見えてきます。3台目、4台目も同じような傾向が続きますので、おおよそ楽器作りの工程を理解したいと言えるようになるのは5台目ぐらいからが多いかもしれません。そのため、楽器作りについては、卒業時点ではまだまだ学ぶべきことを多く残しているものの、明確な課題をそれぞれにもっているという状況になっていると思います。
昔ながらの家内制工業の伝統を受け継ぐ気風のある学校では、製作においてもスピードを重視する傾向がありますが、島村楽器テクニカルアカデミーではどちらかというと2年間という短い期間で技術的なスタンダードを感じていただくために作業の質を重視し、楽器の様式美の理解などと合わせて、なるべく1台目から実用に耐えうる楽器を製作していくことを目指しています。
楽器のメンテナンスは毛替えやセットアップを繰り返し行なって経験を少し積み始めています。毛替えについては弓そのものに問題がない場合は、2時間以内に毛替えを終えられる学生も増えています。毛替えについては毎回質をコントロールしていくことに細かい課題を見つけられるようになっています。
セットアップ(魂柱、駒、弦などをセッティングすること)は毛替えに比べると工程の多さもあり、まだまだスピードにのっているとは言えませんが、就職や見習い先の工房で具体的なアドバイスを受けて、それに即応できるような基礎が身につきつつあるという状況です。
修理もまだまだ経験は少ないものの、修理のバリエーションや今後学ぶべき技法についてはある程度思い描くことができるような状態になっています。

楽器演奏については、バイオリンとチェロの調弦と音階などが確認でき、小曲に取り組む人やさらに熱心に演奏練習を進める人も出てきます。演奏経験のある学生の多いときは、学園行事などにあわせて演奏がたびたび行われます。

このように総じて見ると、独立するには10年早いものの、卒業後に就職する楽器店や工房において技術的なアドバイスを受けた時にそれらを理解し、取り入れて成長していく素地ができているというのが2年後の学生の現実的なイメージと言えるのではないかと思います。

本科を中心にお話しましたが、夜間科は演奏授業と製作授業はないもののメンテナンスと修理について同じようなレベルになることを目指します。

弦楽器技術の仕事は職人仕事としての側面が強いものの、決して1人でやっていく仕事ではありません。演奏家はもちろんのこと同僚も仲間もいる仕事なので、ここで過ごす2年間が皆さんにとってその後の仕事を周囲の方々とともに気持ちよく誇りをもって進めていけるための基礎になってほしいと思っています。
また、技術というのは不思議と「成熟」するので、難しくなかなかできなかった作業が、ふとあるときに急にできるようになるという経験を技術者であれば誰でももっています。そのため、根気よく続けていくことが大事です。そこにいたるまで続けたいと思える楽しさも見出してもらいたいと願っています。