実証性について

初回のコラムで、学科で大事にしたいことにふれましたが、今回はもう少し大きな話、現代の技術者が全世界的(!)に大事にしていることにふれたいと思います。

全世界で大事にするようになったこと、それは「実証性」ではないかと思います。
もう少しかみくだいて言うならば「いい加減なことをなるべく言わない」ということです。

弦楽器はそれ自体が商品としての売買がされる歴史の中で、より高価でより魅力的に売られるために、それぞれの楽器や弓の特性などが実証されないまま、あるいは本来の姿からは少しずれた形で語られるようになってしまった、という歴史的側面があります。
「ストラディバリのニス」などはそのもっともわかりやすい例です。

今日では、世界中の技術者やディーラーができるかぎり専門的な知識や技術を実証的に扱っていこうという気構えと倫理を共有するようになってきていますので、代官山音楽院でも、講義で何かが語られるときには、その知識や技術がどこから来たのか、出典がわかるものについては出典元を、ルーツがわかるときにはルーツを示し、講師の経験から語られるときには経験が基盤にあることをなるべく話すようにしています。

私たち技術者(あるいは販売員、ディーラー)は多くの場合、決して研究者ではありません。
どちらかというと研究結果を現場で活かしたりする立場、享受する側にあります。
そのため、多くの場合、私たちが専門的に何気なく語ることも、その根拠をたどっていくと他の誰かの研究であったりすることが多いのですが、出自を明らかにすることで、万が一その情報が間違っている場合には、どこの何が間違っているということが明確にわかり、訂正がしやすくなり、またその後の修正も積み重ねていきやすいということがあります。

こうした実証性を大事にする姿勢は、イギリスの楽器店として名を馳せたHill商会、アメリカで900年代に活躍した弦楽器技術者S.F.Sacconi氏などによって推し進められ、今日では全世界の熱心な製作家・技術者がこの流れを継承し広めていっているように思います。

世界中でつながっているこの弦楽器ワールド(!)、ぜひ皆さんも足を踏み入れてみませんか。

(写真は、バイオリンクラフト&リペア科の蔵書の一部です。)
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