ブルーノ・デストレ氏 コントラバスセットアップセミナーを開催

7月4日、7月5日にブルーノ・デストレ氏によるコントラバスセミナーが開催されました。

Bruno Destrez氏 略歴と紹介
コントラバス(ウッドベース、ダブルベース)のルシアー(リペアマン/修理士)

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1978年にフランス、ニース・ナショナル・コンセルヴァトワールにてクラシックのコントラバス演奏を学ぶ。その際、楽器のコンディションに不満をもったことが契機となり、パリやニースの弦楽器技術者から本格的なリペア技術を学び始め、ベースの修理を始める。
1982年にはアメリカ・ボストンのバークリー音楽大学へ留学し、クラシック奏者、ジャズ奏者として活動する合間、プロフェッショナルな弦楽器技術者としてのキャリアを始める。

ブルーノは世界中を旅する間、ヨーロッパとアメリカ北東海岸の弦楽器技術者達から学び続け、修理・修復への新しいアプローチを常に受け入れて、今日のベーシスト達の問題を解決する為のテクニックを発見することにつながる、楽器の物理的特性を理解するモデルを自身の内に作り上げた。

彼の改革的なアプローチは世界中の多くの有名なベースプレーヤー達の興味を惹き、高い信頼を得ている。

そして、彼がヨーロッパとアメリカのルシアー達から学んだテクニックの組み合わせは、過激な気候の変化、度重なる旅行という過酷な状況下に置かれる楽器のための解決法を見付けることへ導いた。
彼の楽器へのアプローチは、内に秘めた楽器への感謝の想いからきている。また、自身がプレーヤーとして理解してきたアーティスト達が演奏したいと望む音楽に生じる問題と彼らの楽器が持つ問題を解消し、助けたいとの想いから来ている。

彼の手にかかると、ベースは弾き易くなり、開放音が鳴り(open sounding)、広いの音域を均等に鳴らすことができるという証言は多い。現在、ブルーノは自身のベースを作り上げることよりも、現存しているコントラバス(ウッドベース、ダブルベース)を修復することや、その楽器を持つベースプレーヤー達を助けることに専念している。

彼は今も尚、自身の演奏活動、教育、そして彼の仲間であるベースプレーヤー達が直面している問題の解決法を見付ける為に世界中を旅している。

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今回のセミナーは告知期間が短いこともあり実施できるか心配がされましたが、おかげ様で両日とも無事開講できました。

行われたのはコントラバス(ウッドベース、ダブルベース)のセットアップについてでした。
両日ともまず、駒・魂柱・指板・ナット・テールピースなどそれぞれのパーツについてレクチャーがあり、1日目はプロの演奏者立ち会いのもと音調整の実践、2日目は駒へのアジャスター取り付けが行われました。

コントラバスをバイオリンやチェロと比較した時に言われることに、スタンダードがないということがあります。
スタンダード(標準)がないとはどういうことでしょうか。
バイオリンはチェロは1930年代から1940年代にかけて、クラシックの演奏法を基盤として、楽器そのものの寸法やサイズがあるスタンダードをもつようになりました。
それに対し、コントラバスは、バイオリンやチェロほどの明確な寸法やサイズに関するスタンダードをもたないまま、今日にいたっています。
(その顕著な例は、3/4 やフルサイズ(4/4)と呼ばれるコントラバスのサイズに明確な定義がないことなどです)
これはコントラバスが非常に大きな楽器であるととともに、ヴィオール属というバイオリン属とは別の系統をもつ楽器の一群から派生したことといくらか関係があるかもしれません。

いずれにせよ、スタンダードをもたないということは、駒や魂柱のセッティング(弦楽器業界では一般に楽器のセットアップと言います)にかなりの幅が出てくるため、バイオリンやチェロのように「そこの寸法はいくつですか?」と聞くことを非常に難しくしています。

また弦楽器技術を教える学校(当校も含めて)において便宜的に行われている指導方法(寸法を予め与えて、それを実現していく)が原因で、バイオリンやチェロなどのセットアップについては寸法に合わせていくものだと考えがちだという面もあります。

しかし、弦楽器に少しでも携わったことがあれば、寸法通りに作業を進めたら、すべて問題なく仕上がるというわけではないということは誰でもわかることです。これはスタンダードがかなり定まっているバイオリンやチェロでさえ、個体差があり、その個体差に合わせた調整というものが求められますが、コントラバスにおいてはその幅が非常に大きいので、そのときどきの適切な各所の寸法というものはその都度、楽器と「格闘する」中で初めて明らかになるとも言えます。

最近でこそコントラバスの技術はバイオリンやチェロのやり方の影響を受け、一見、体系化された情報が手に入りつつあります。しかし、30年前からのキャリアを持つブルーノ氏はその流れよりも前から技術者として研鑽を積み、自身の演奏者としての経験を下地に試行錯誤を重ねてセットアップの基準を作り上げてきた方です。

「基準」とは何か、について改めて考えさせられるセミナーでした。

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