第3回レポート
「ペグボックス割れへの対処、ペグ穴位置の決め方」

12月9日(月)にAndreas Preuss 氏による修理・修復特別講座第3回目が開講されました。

ペグボックス割れとは

今回は「ペグボックス割れ」に関する講義がされました。

前回の「ブッシング」講義とも関連の深い講義ですが、修理にたずさわったことがない方のためにも簡単にどのような状況でペグボックス(糸巻き箱)に割れが生じるのか簡単に見てみたいと思います。

いくつかのケースが主に見られますが、もっとよくあるのはバイオリンで言えば第2弦にあたるA線(開放弦でラの音)のペグ穴からペグボックスに亀裂が入ることでしょう。
これは、ペグボックスの構造上、木材の繊維方向の裂断が起きやすい場所にA線のペグが位置することや、ペグそのものが円錐形をしていることや、ペグのフィッティングが十分になされていない時に過度な力で押し込まれることなど様々な要素が重なって起きることが多いと思われます。
またコントラバスなどはペグではなくペグボックスとネックの境目に割れが生じることも多くありますが、これは弦の張力による負荷などが主な原因です。

講義の内容

いずれにしても、ペグボックス割れに共通する問題は「割れが生じたところに負荷がかかり続ける」ということです。たとえ修理をしたとしても負荷はかかり続けるので、上手に修理をしなければ、一度割れを接着しなおしても再び傷口が開いてしまうということが珍しくありません。

そのため、修理後に再び負荷を与えても問題が生じないように古今東西、様々な特殊な道具を用いた修理方法が開発されてきました。様々な方法が専門書などで紹介がされていますが、それらの方法の1つの問題点は、修理道具が高価であり、その道具がなければ修理ができないものが多いということです。

講義は、技術者にとって比較的手に入りやすい道具を使い、構造的に強靭で、見た目にも目立ちにくい修理をいかに行うかという実践的な内容でした。
特殊な道具を用いて修理を行うことは、それに対する充分な対価を要求できる楽器(もしくは顧客)が限られているという現実があります。したがって、身近にある道具でいかに効果的な修理ができるかということは私たち技術者にとって関心事の1つです。

時間が限られてはいましたが、講義の終わりにはペグ穴配置に関する講義もしていただきました。

今回もPreuss氏は実技を交えながら、作業のポイントを挙げながら工程を見せてくださいました。
これまでもそうでしたが、作業の実際をセミナーに参加されるプロの技術者に見せるというのは決して、講師にとっても簡単なことではありません。こうして実演を交えながら講義をしてもらえるというのは、講義を通しての気づきや発見の大小にかかわらず大変ありがたいことだと改めて感じました。
また参加いただいたプロ技術者の方々から、現場での実際的な悩みや課題をお持ちいただき共有させていただけたのは大変有りがたかったと思っています。

次回はエッジ(縁側)の修理に入っていく予定です。